大切な資産だからこそ、少しでも高く売りたいと願うことは売る側の当然の心理。しかし、不動産の売却のシーンでは、物件の価格と同様、あるいはそれ以上に注意するべきことがあります。多くの方が売却時に見落としている、大切なあることについて、今回はお伝えします。
さて、もしあなたが、所有する不動産の売却を考え、数社に不動産の査定を依頼したとしましょう。あなたは、その数社から査定の提示を受けた上で、一番高い査定額を提示してくれた会社に媒介を依頼しようと考えます。しかし、一番高い査定額を提示してくれた会社の仲介手数料は、他の会社の3倍だったとしたら、あなたはその会社に売却を依頼をするでしょうか?
答えは、、、身内とかじゃない限りお願いしないかもしれませんね(笑)当然のことながら、売却の査定額が高くても、最終的な手残りが少なくなるなら本末転倒です。この不動産の売却における最終的な手残り、あなたはどんなイメージをお持ちでしょうか?
大切なことは ”査定額” より ”手残り額”
不動産の売却の相談において、多くの方の一番の関心事は、もちろん査定価格だと思います。自分の大切な資産の価格ですし、不動産業者や一括査定サイトなどでまず査定!と煽っているところもありますので、お気持ちは十分わかります。
しかし、前述の通り「いくらで売れるか」よりも、売る人にとって大切なことは、「いくら残るのか」ということ。仮に査定の価格で売れたとしたら、最終的に手元にいくら残るか、売却の目的を叶えることが出来るかを把握することが大切です。通常、売却時の手残りは、下の式で算出が可能です。
売却時の手残り = 売却価格 ー ローン残債※1 ー 譲渡費用※2
※1 ローンの残債がある場合は、一括返済する必要があります。
※2 仲介手数料、契約時の収入印紙代、抵当権の抹消費用などの譲渡費用が発生します。
ローンの残債と譲渡費用が売却価格を上回り、手残りがマイナスとなる場合は、自己資金での補填が必要となり、補填が出来ない場合は売却が困難となります。
今回のコラムで、お伝えしたいことは、ここで記載の「売却時の手残り」は、正式には「売却時の税引前の手残り」である点であり、真の手残りではないという点です。
真の手残りATCFとは
今回のタイトルの注目すべきATCFとは、After Tax Cash Flow つまり税引後の手残りのことです。不動産売却における真の手残りとは、この税引後の手残りのこと。これを把握した上で売却を行うかどうかによって、結果に大きな差が発生する場合があります。
売却時の税引後の手残り = 売却価格 ー ローン残債 ー 譲渡費用 ー 税金
この売却にかかる税金は、いつ売却するか、どのように売却するかによって、税額や所得控除が変わわることがあります。場合によっては、年内中に売却する方が税金が安く手残りが多い場合もありますし、年を跨いで売却した方が手残りが多い場合もあります。
例えば、空き家の売却を行う場合で、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例に該当する様に売却を行うかどうかで、最大約600万円もの税金の優遇を受けることが出来ますが、優遇を受けるためには、定められた条件に該当する空き家を一定期限内に定められた方法で売却する必要があります。
冒頭にもお伝えしましたが、査定額も確かに大切な要素。しかし、それ以上に大切なことは、売却によってご自身の目的が達せられるかどうかだと思います。例え100万、200万高く売却が出来たとしても、税金によってその努力が水の泡、ぬか喜びともなりかねません。備えあれば憂いなし、しっかり対策を行うことで、しっかりと手元に残る売却を計画しましょう。