そのリスクは突然やってくる ー 中古住宅のススメ vol.4

不動産コラム

こんにちは、大分かぼす不動産の井上です。
随分と間があいてしまい、多くの方から続きをアップしろとのお声を頂き、本当にありがたく思っています。お待たせしてしまいましたが、第4回もご覧頂きありがとうございます。

前回のコラムでは、マイホームのもう一つの側面である資産価値についてお伝えしました。
もともと賃貸派だった僕は、家の資産という側面や、資産形成に有利に働く住宅購入について考えることで、自分の選択が変わるということを身をもって感じたわけです。

さて、今回のコラムは、そんな僕が経験した引っ越しを余儀なくする出来事から、マイホームを購入する方が備えるべきリスクについてお伝えしたいと思います。僕なりの考察ではありますが、皆様の参考になれば幸いです。

前回のコラムはこちらからどうぞ。

住まいの資産価値に目を向けよう ー 中古住宅のススメ vol.3

僕が体験したマイホームからの引っ越し

大分かぼす不動産の移転オープン2日目、令和2年7月豪雨が発生しました。移転オープン二日目ということもあって忙しく働いていたその日、購入した家の前の河川が増水。深夜に避難指示が出たため、幸いにもビルの2階だった移転オープン間もない事務所に家族で避難しました。翌日戻った我が家は、幸いにもギリギリ浸水被害は免れていたものの、周囲のお宅では浸水被害が発生。テレビでは天ヶ瀬温泉の甚大な被害を伝えていました。

もともと、購入した家は永住するつもりのない家。我が家では、河川の近くでの暮らしに嫌気が差し、すぐに転居の検討を始めました。既に小学校に通う長男のことが一番気がかりでしたが、移転先候補の小学校にも友達が多く、本人もあっさり転校を承諾。ちょうど、下の子が来年小学校に入学するタイミングであること、購入時に想定していた通り売却価格の方が残債を上回るということもあり、我が家はマイホームの売却・転居・転校をあっさり決めました。

そして、仲介を依頼した業者さんのお力添えもあり、令和2年7月豪雨から1年弱で売却を終え、その後、移転した会社から徒歩2分ほどの距離に、妻好みの新たなマイホームを取得することも出来ました。

売却により快適になったマイホーム

正直なところ売却した家は、あれこれ考えて購入・リノベーションしたこともありましたし、そこで妻や子供達と遊んだ思い出もたくさんあり、当初は少し寂しい気持ちもありました。しかし、それ以上に、河川の増水のリスクから逃れられたこと、売却後に購入したマイホームが快適であることで、その寂しさもすぐ無くなりました。

売却した家は住宅ローンもあまり長く組んでおらず、返済も進んでいたため、売却価格は残債を大きく上回りました。購入時に想定した通り、住宅ローンとして払ってきたお金は蓄財に回り、新たなマイホームの購入資金にスライドさせることが出来ました。

当然、今回のマイホームの購入の際も今後の生活を考え、資産価値の高い物件を選んだつもりです。住み替えによって手元のお金は一時的に失ってしましましたが、仮に今売ることになったとしても、残債を上回ることが出来ると思いますので、売却の際はまたある程度の資金となってくれるといいなぁと思っています。

何が起こるかわからないのが人生

日本の住宅ローンの返済困窮者は4%ほど、破綻率は2%ほどと言われています。返済困窮者は25人に1人の確率なので、クラスに一人か二人ぐらいは滞納していて、クラスに一人ぐらいは住宅ローンが払えず破産に追い込まれている感じです。この確率を聞いて、結構多いと思いと感じるのは僕だけではないと思います。

病気も怪我もせず、仕事も順調にできて、引越しを余儀なくされることもなく、離婚も親の介護もすることなく、子供の学費もかからず、35年、40年という長い期間、毎月住宅ローンを払い続けることは、簡単なことではないと今でも思っています。

事実、新型コロナウイルスの流行や、ここ最近の円安の問題は、自分一人の努力でどうなるものでもなく、真面目に働いても、健康に気をつけていても、誰しもリスクを抱え、それが顕在化することは多々あります。住宅ローンだけではありませんが、大きな借入を行うことは、その様な人生における不測の事態が発生した場合に、破産もあり得るほどの金銭的なダメージを受ける可能性があるということです。

しかし、例えどんな問題に遭遇しようとも、そもそも住宅ローンがない人は住宅ローンで破綻することはありませんし、残債のせいで売却が出来ないという事態にも陥りません。つまり、住宅購入の一番のリスクは、住宅ローンを清算出来ないリスクと言えるかもしれません。

マイホーム購入がもたらす家計の債務超過

売却時に手元資金が潤沢であれば、売却価格がローン残高を多少割り込んだとしても、割り込んだ部分を手元の資金で清算することが出来ます。しかし、手元資金もなく、他の資産を工面してもローンの清算が出来ない場合は、基本的に売却が出来ません。

この様な売却してもローンが清算出来ない状態とは、家計が 負債 > 資産 の状態にあり、債務超過となっていることを意味しています。これは、転職や失業、離婚などによる収入減で支払いが困難となった場合でも、マイホームを売却して住宅ローンを清算すること出来ないため、大きなリスクを抱えることになります。

以前のコラムでも少し触れましたが、やはり大切なことは少し先のことを考えてみること。借入はどんなペースで返済が行われ、それに対して購入したマイホームの価値がどう変化するかを考えることが大切だと思います。

マイホームは大きな買物であることは間違いない

住宅購入に関する統計調査などを見ると、物件購入の決め手で常にトップとなっている要素は、「希望する立地だった」と「希望する価格だった」の二つ。
希望する立地で快適に暮らせることは、家の有用性であり使用価値と言えます。一方で、価格というのは家の交換価値そのもの。僕自身もそうでしたが、使用価値と希望する交換価値が合致するのであれば、決め手になるのは十分理解できます。

しかし、考えていただきたいのは、この希望する価格という代物。この価格は、恐らく購入する時の予算のことであり、ともすると住宅ローンの借入可能額のことかもしれません。少なくとも、その家の資産価値のことではないはずですし、将来的な資産価値のことでもありません。

いくら低金利時代で、住宅ローン控除があるとはいえ、住宅ローンは紛れもなく借金。銀行が融資をしてくれるからと、予算いっぱい買う行為は、消費というより限りなく浪費に近い印象です。例えるなら、融資が受けられるからという理由で、不相応な車を新車で購入するといったところ。やはりオススメ出来ません。

あなたの人生を賭けて取り組む価値は本当にあるか?

ちょっと視点を変えると、世の中には1000万円以下はもちろん、中には100万円を割る家もあり、人口が大きく減少しているエリアではタダを通り越し、お金をもらって引き取る家だってある時代。
僕も不動産を生業とする立場、あなたが立派なマイホームを欲する気持ちは理解できます。しかし、その一方で、こんな家が余る時代に建てるその数千万円のマイホームは、あなたの人生を賭けて取り組む価値があるかどうかを考えることも僕は大切だと思うのです。

次回は、住まいを仕事にしてきた僕が考えるこれからの住宅観についてお伝え出来ればと思います。今回もお読み頂き、ありがとうございました!(続く)

 

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