良い家を選ぶ”モノサシ”はいかがですか?

不動産コラム

もしあなたが、自動車を買うとしたら、数ある車の中から値段はもとより排気量や燃費性能など、自分が必要とするスペックを確認すると思います。パソコンであれば、OSやメモリ、ハードディスクの容量などを確認するかも知れません。

では、住宅を買うときはどうでしょうか?立地や周辺環境は、容易に比較が出来るかもしれませんが、耐震性能や省エネ性能、どの住宅がどう優れているかを確認するには、どうすればいいのでしょうか?

2000年4月に「住宅の品質確保の促進」と「住宅購入者等の利益の保護」を目的として「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下、品確法)という法律が施行され、住宅性能表示制度という制度がスタートしました。その名の通り、住宅の性能を表示する仕組みで、言ってみれば、住まいを選ぶ上でのひとつの”モノサシ”を、今から20年以上前に法律で定めたことになります。

今回は、そんな住宅性能表示制度について解説します。

住宅性能表示制度のしくみ

冒頭お伝えした通り、住宅性能表示制度は、品確法という法律で定められた制度です。国土交通大臣から登録を受けた第三者機関である登録住宅性能評価機関が、申請に基づき定められた基準に従って住宅の性能評価を行い、その結果を住宅性能評価書として交付を行います。

外見からでは容易に判断しにくいことを、国が定めた全国共通の基準で評価を行うことで、見た目の違いだけでなく、性能の違いをわかりやすくしようとするものです。

住宅性能評価書は2種類ある

新築住宅の住宅性能表示制度ガイドより抜粋

住宅性能評価書には、設計図書の段階の評価結果をまとめた設計住宅性能評価書と、施工段階と完成段階の検査を経た評価結果をまとめた建設住宅性能評価書の2種類があります。この2種類の評価は、まず設計の段階で、目指すべき性能があるかどうかを評価し、工事中及び完成後の検査で設計の段階で評価した性能を満たしているかを評価するという仕組みになっており、予め設計住宅性能評価を受けていないと、建設住宅性能評価を受けられません。

住宅性能評価を取得するメリット

品質が担保される

国が定めた第三者機関により性能が評価されるため、万が一の災害への備え、ホルムアルデヒドへの対策、将来のメンテナンスコストなど、自分が求める品質が担保された住宅を購入することができます。住宅の品質は、購入される家族の健康や安心につながっています。

住宅ローン金利・地震保険料が優遇される

購入に際して、住宅性能評価を取得するメリットとしては、住宅ローンの金利や地震保険料の優遇があります。住宅金融支援機構のフラット35Sでは、性能について基準を満たす住宅であれば当初10年間(または5年間)の金利引き下げプランの利用が可能となります。

フラット35のHPより抜粋 ※2021年11月現在

※フラット35Sの詳細:https://www.flat35.com/loan/flat35s/index.html

地震保険については、住宅性能評価を取得することで、耐震等級による割引や免震建築物による割引があります。

※地震保険の割引制度の詳細:https://www.sompo-japan.co.jp/kinsurance/fireinsurance/jyukou/earthquake/cost/

将来の売却時にも有利になる

住宅の性能が可視化されることは、購入希望者の安心につながります。これまで不透明であった中古住宅の性能も、住宅性能評価書があることで、容易に伝えることができます。一度性能評価を受けた住宅は再検査の費用が割引となる制度もあるため、検査のコストも抑えることができます。

万が一の紛争時も費用が安くなる

建設住宅性能評価書が交付された住宅は、万が一の紛争の際もお得です。建築会社や不動産会社と紛争になった場合、指定住宅紛争処理機関に紛争処理を申請することができ、紛争処理の手数料は1件あたり1万円です。

指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)は、裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための機関で、 建設住宅性能評価書が交付された住宅の紛争であれば、評価書の内容だけでなく、請負契約・売買契約に関する当事者間の全ての紛争の処理を扱っています。

どんな性能を評価しているのか?

日本住宅性能表示基準で取り上げた性能表示事項は34(新築住宅は32事項)あります。この性能表示事項は、次の10 分野に区分されています。10分野の中には、評価を受けるために必要な必須の4項目と、評価を受けたい項目を選択できる任意の項目があります。

① 構造の安定に関すること(必須・7事項)

1)地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ
2)地震に対する構造躯体の損傷の生じにくさ
3)評価対象建築物が免震建築物であるか否か
4)暴風に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ及び構造躯体の損傷の生じにくさ
5)屋根の積雪に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ及び構造躯体の損傷の生じにくさ
6)地盤または杭に見込んでいる常時作用する荷重に対し抵抗し得る力の大きさ及び地盤に見込んでいる抵抗し得る力の設定の根拠となった方法
7)直接起訴の構造及び形式又は杭基礎の杭種、杭径及び杭長
 

② 火災時の安全に関すること (7事項)

1)評価対象住戸において発生した火災の早期の覚知のしやすさ
2)評価対象住戸の同一階又は直下の階にある他住戸等において発生した火災の覚知のしやすさ
3)評価対象住戸の同一階又は直下の階にある他住戸等における火災発生時の避難を容易とするために共用廊下に講じられた対策
4)通常の歩行経路が使用できない場合の緊急的な脱出のための対策
5)延焼のおそれのある部分の開口部に係る火災による火炎を遮る時間の長さ
6)延焼のおそれのある部分の外壁等(開口部以外)に係る火災による火熱を遮る時間の長さ
7)住戸間の界壁及び界床に係る火災による火熱を遮る時間の長さ

③ 劣化の軽減に関すること (必須・1事項)

1)構造躯体等に使用する材料の交換等大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策の程度

④ 維持管理・更新への配慮に関すること(必須・4事項)

1)専用の給排水管・給湯管及びガス管の維持管理(清掃、点検及び補修)を容易とするため必要な対策の程度
2)共用の給排水管・給湯管及びガス管の維持管理(清掃、点検及び補修)を容易とするため必要な対策の程度
3)共用排水管の更新を容易とするための必要な対策
4)住戸専用部の間取りの変更を容易とするため必要な対策

⑤ 温熱環境に関すること(必須・1事項)

1)暖冷房に使用するエネルギーの削減のための断熱化等による対策の程度

⑥ 空気環境に関すること(3事項)

1)居室の内装の仕上げ及び換気等の措置のない天井裏等の下地材等からのホルムアルデヒドの発散量を少なくする対策
2)室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための必要な換気対策
3)評価対象住戸の空気中の化学物質の濃度及び測定方法

⑦ 光・視環境に関すること(2事項)

1)居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の床面積に対する割合の大きさ
2)居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の各方位毎の比率の大きさ

⑧ 音環境に関すること(4事項)

1)居室に係る上下階との界床の重量床衝撃音(重量のあるものの落下や足音の衝撃音)を遮断する対策
2)居室に係る上下階との界床の軽量床衝撃音(軽量のものの落下の衝撃音)を遮断する対策
3)居室の界壁の構造による空気伝搬音の遮断の程度
4)居室の外壁に設けられた開口部に方位別に使用するサッシによる空気伝搬音の遮断の程度

⑨ 高齢者等への配慮に関すること(2事項)

1)住戸内における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度
2)共同住宅等の主に建物出入口から住戸の玄関までの間における高齢者への配慮のために必要な対策の程度

⑩ 防犯に関すること(1事項)

1)通常想定される侵入行為による外部からの侵入を防止するための対策

まとめ

住宅性能評価の等級が高ければ性能も高いのは確かですが、それぞれの分野でトレードオフする部分もあります。住宅以外でも同じことが言えますが、価格と性能のバランスはもちろん、高い等級を目指せば設計の縛りも増え、自由度も下がります。どの分野のどれを優先するか、どれが満たされれば納得出来るかを考えることが大切です。

金利や、保険料、メンテナンスコストなども性能によって変わりますし、より高い性能に惹かれる気持ちは理解できます。しかし、過度な性能よりも、家族の幸せや健康に繋がり、安心・安全な日々を送ることができる家が一番。

あなたにあった住まい選びに、ぜひ住宅性能評価をお役立てください。