通称と公称、所在と住居表示の違い

不動産コラム

大分市内や別府市内は、古くから正式な住所(公称住所)と、いわゆる「通称住所」が地元住民の間で同列に利用されている地域で、不動産業に携わっている人の中でも、正式な住所と通称住所の違いが分かっていない人を多く見かけます。 実際にそこに住んでいる人たちも、通称住所を普段から使っているため、 申し込み書類などに公称での記入をお願いしても、公称が分からないとおっしゃる方が少なくありません。

同じ場所なのに郵便番号が2つ?

僕が以前住んでいたアパートは、公称では”大分市大字荏隈394番地1”ですが、通称は”大分市大石町3丁目3組の5”でした。郵便番号もそれぞれに違う番号があり、どちらでも郵便物は届きます。同じアパートに二つの住所が存在しており、101号室は”大字荏隈”、201号室は”大石町3丁目”を使っているといった具合です。

通称住所:〒870-0851 大分市大石町3丁目3-5(小野ビル101号)
公称住所:〒870-0889 大分市大字荏隈394-1(小野ビル101号)

通称住所の存在を知らない方にとっては、不思議な話だと思いますが、大分市と別府市ではこの通称住所が多く使われています。しかも、どちらかというと公称よりも通称の方が、郵便や宅配便などはしっかり届きます。つまり、公称よりも通称の方が認知されているということです。

堀越 寶世(ほりこし たかとし)と本名を名乗っても誰だか知りませんが、市川 海老蔵と言ってくれたらみんな知っているという感じに似ているかも知れませんね。

通称住所・公称住所の違い

大分市大石町の住宅地図

通称住所は建物を特定しにくい

上の地図も、すべて”大石町〇丁目”になっていますが、これはすべて通称住所であり、ここからさらに””単位にわかれています。実際に、僕の昔の住所も”大石町3丁目3組の5”でしたが、組はあくまで範囲を指定するものであり、建物を特定するものではありません。 つまり、本来はその人の住まいを特定するための住所の表記が、大分市大石町3丁目3組”界隈”となってしまい、建物の特定が難しいという事です。

通称は免許証の住所には使用できるが、登記には使用できない

そして、通称住所にどれだけ馴染みがあっても、地域では認知されていても登記名義人の住所としては使用することが出来ません。そもそも登記申請を日常的に行うことはないと思いますが、登記の際には通称住所が使用できませんので注意が必要です。

運転免許証の住所には、通称住所での表記が可能ですが、国家資格の登録や登記など、いざ本人確認の資料として免許証を利用すると、公称住所との相違してしまうので、普段から公称住所を利用すること僕はおすすめしています。

建物を特定するための住居表示

明治以降の日本では、町名や字名と地番で公称住所を設定していましたが、前述した通称と同様に、建物を特定する仕組みではありませんでした。そのため、家が密集してくると、以下の様な様々な不都合が発生しました。

  • 同じ住所の建物が出てくる。
  • 地番の並びが土地並びと一緒にならない。
  • 町名・字名を付する範囲が複雑で不明確。
  • 同一市町村内に同一・類似の町名がある。
  • 郵便物や宅配便の配達に支障が出る。

街区方式と道路方式

そこで、昭和37年5月に「住居表示に関する法律(略称:住居表示法)」が制定され、この制度が実施される区域内は、街区符号と住居番号(または道路の名称と住居番号)で表されることとなりました。

住居表示は、原則として市街地にある住所若しくは居所又は事務所、事業所その他これらに類する施設の所在する場所を表示するには、都道府県、郡、市、区及び町村の名称を冠するほか、次の各号のいずれかの方法によって表示すると定められています。

  1. 街区方式 市町村内の町又は字の名称並びに当該町又は字の区域を道路、鉄道若しくは軌道の線路その他の恒久的な施設又は河川、水路等によって区画した場合におけるその区画された「街区」につけられる「街区符号」及び当該街区内にある建物その他の工作物につけられる「住居番号」を用いて表示する方法。
  2. 道路方式 市町村内の道路の名称及び当該道路に接し、又は当該道路に通ずる通路を有する建物その他の工作物につけられる「住居番号」を用いて表示する方法。

住居表示実施地域であるかを確認しよう

マイホームの新築の現場では、新築の家が完成し、建物表題登記、所有権保存登記を行う際は、申請人である施主の住所を新築建物の所在地へ異動させた後に、登記申請を行う事が一般的です。 実態としては、残代金分の融資の実行、代金の支払い、建物の引渡し、保存登記及び抵当権設定登記を終えてからのお引っ越しとなりますが、実態の通り移転前に登記を申請すると、住所変更を再度行わなければならず、費用が余計に掛かるため、前述の通りに引渡し前に住所を新築建物の所在地へ移すこととなります。 その際、住居表示実施地域内では、新築建物の住居番号を新たに設定し、その設定された住居表示の住所への住所移転を行う必要がありますので、住所移転前に届出が必要です。

物件が所在するエリアが住居表示を実施している地域かどうかについては、各自治体へ問い合わせを行えば、電話等でも解答頂けることが殆どです。各自治体のHPでも地域や必要な手続きなどについて周知を行っていますので、都度確認を行うと良いでしょう。

お問い合わせ先

大分市役所 市民部市民協働推進課
電話番号:097-537-5612 ファクス:097-536-4605

別府市役所 市民課 窓口サービス第1係・第2係
電話番号:0977-21-1135・0977-21-1137